
多肉植物の交配は、園芸愛好家やブリーダーにとって非常に魅力的な分野です。特に「属間交配」と呼ばれる異なる属同士の交配は、ユニークな見た目や性質を持つ新品種を生み出す可能性があり、コレクターにも人気があります。
本記事では、エケベリア、セダム、グラプトペタルムなどの属間交配の魅力について、具体的なハイブリッド種の例を交えながら詳しく解説していきます。
※写真はグラプトペタルム属(朧月)とエケベリア属(ラウイ)の交配実生苗(実生は種から生まれた苗という意)
属間交配とは?
属間交配とは、異なる「属」に属する植物を掛け合わせることで、新しい特徴を持つ品種を生み出す育種技術のことです。通常、同じ属内での交配(種内交配)が一般的ですが、属間交配ではより幅広い遺伝的なバリエーションが生まれ、ユニークな形や色を持つ多肉植物が誕生します。
多肉植物の中でも、エケベリア(Echeveria)、セダム(Sedum)、グラプトペタルム(Graptopetalum) は、属間交配によって非常に美しいハイブリッド種を生み出してきました。
属間交配の魅力とメリット
1. 独自の形状や色合いを持つ個性的な品種が生まれる
属間交配では、親株の特徴を受け継ぎつつ、全く新しい形や色の植物を作り出すことができます。例えば、エケベリアの美しいロゼット型の葉と、グラプトペタルムの透明感のある葉を掛け合わせることで、幻想的な多肉植物が誕生することがあります。
2. 耐寒性や耐暑性が向上することがある
属間交配によって、より丈夫な性質を持つ品種が生まれることがあります。例えば、エケベリアは寒さに弱い品種が多いですが、耐寒性のあるセダムとの交配によって、冬越ししやすい多肉植物が作られることがあります。
3. 成長速度や繁殖力が向上する
セダムやグラプトペタルムは繁殖力が強いことで知られています。これらの属との交配によって、エケベリアの成長が早くなったり、葉挿しやカットで増やしやすい品種が生まれることもあります。
代表的な属間交配種とその特徴
1. グラプトベリア(Graptoveria)
- 親株:グラプトペタルム × エケベリア
- 特徴:エケベリアのロゼット型の美しさと、グラプトペタルムの柔らかく透明感のある葉を持つ品種が多い。比較的丈夫で育てやすい。
- 代表品種:
- グラプトベリア・デビー(Graptoveria 'Debbie’):紫がかったピンク色の葉が特徴。
- グラプトベリア・フレッドアイブス(Graptoveria ‘Fred Ives’):色の変化が楽しめる人気種。
2. セデベリア(Sedeveria)
- 親株:セダム × エケベリア
- 特徴:セダムの耐寒性・耐暑性を引き継ぎながら、エケベリアの美しいフォルムを持つ品種が多い。初心者にも育てやすい。
- 代表品種:
- セデベリア・レティジア(Sedeveria 'Letizia’):赤みを帯びた葉が美しい。
3. パキベリア(Pachyveria)
- 親株:パキフィツム(Pachyphytum) × エケベリア
- 特徴:ぷっくりとした葉を持つパキフィツムと、エケベリアのロゼット型が融合した可愛らしい品種が多い。比較的水を好む。
- 代表品種:
- パキベリア・ブルーヘイズ(Pachyveria ‘Blue Haze’):青みがかった美しい葉色。
属間交配の注意点
属間交配には魅力が多い一方で、いくつかの注意点もあります。
1. 交配が成功しにくい場合がある
属が異なるため、花粉がうまく受精しない場合があります。また、交配が成功しても、発芽率が低かったり、成長が遅かったりすることもあります。
2. 予想外の性質を持つことがある
親株の特徴を受け継ぐとはいえ、交配によって思いがけない性質が現れることがあります。例えば、親よりも成長が遅かったり、耐寒性が期待ほど強くなかったりすることもあります。
3. 属間交配種は市場に少ない
種内交配に比べて育成が難しいため、市場で手に入る属間交配種は限られています。しかし、専門の多肉植物店やネット販売(例えば「むらさき園」など)では、希少な属間交配種が販売されていることもあります。
まとめ:属間交配の多肉植物を楽しもう!
属間交配によって生まれる多肉植物は、ユニークな形や色合いを持ち、コレクションや育成の楽しみが広がります。エケベリア、セダム、グラプトペタルムなどの属を組み合わせることで、育てやすく美しい品種が誕生します。
「グラプトベリア」「セデベリア」「パキベリア」などの人気ハイブリッド種を取り入れながら、自分だけのお気に入りの品種を見つけてみてはいかがでしょうか?
また、属間交配に興味がある方は、交配に挑戦してみるのもおすすめです。花が咲いたら、異なる属の花粉をつけて、新しい多肉植物を生み出す楽しみを味わいましょう!